線香に火がついたときの消し方というのをご存じだろうか?
実はそれにもしっかりマナーがある。
それどころか線香には、消し方には形だけではない、あの世の人たちと関わり合うための心のマナーさえある。
本当に知ってビックリ!
線香は消し方一つでも、そこまで深い意味を持つ。
ご自身の心を豊かにする上でもぜひ知っていてほしいことだ。
線香の消し方のマナーってなぜあるの?
仏壇やお墓に供える線香に火をつけるとき、炎がぱっと燃え上がってなかなか消えないことがある。
その消し方には確かにマナーがあって、してはいけないこともある。
なぜそんなマナーがあるのか?
それは線香というのが、私たちがあの世の人たちと交流したり関わったりするときに知らなければならない礼儀作法だからだ。
そこには3つ、心得ておかなくてはならないことがある。
【1】
線香の煙は、あの世の人たちの“糧(かて)”、つまり食べるものと考えられる。
【2】
同時に私たち生きている人間はその煙に包まれることで身も心も浄化される。
【3】
それで初めてあの世の人たちと交流できるようになるのだ。
あの世の人たちへの感謝、思いやり、そして冥福を祈ること。
それを大切に考えていくと、自然と消し方ができてくる。
それが消し方のマナーだ。
口で息を吹きかけて火を消すのがいけないのは、私たちが不浄だから?
そこでまずそのマナー違反の方を第一にあげてみると、
「口で拭いて火を消す」
ということ。
たまに法事で見かけるけれど、火の消し方がわからない叔父さんや叔母さんがふっと口で息を吹きかけて線香の炎を消すことがある。
私たちも簡単に火が消えるから、ついやってしまうけれど、実はこれはやってはいけないことになる。
なぜなのか、ちょっと深掘りしてお伝えしよう。
私たち生きている人間というのは、普段そういう亡くなった人たちとはつながりが持てない。
なぜかと言えば、“不浄”だから。
殺生をして生き物の命を奪ってそれを食べなければ命をつなげない。
排泄をする。
ウソもつくし悪いことだってしていない人はいない。
その他いろいろ、汚れることばかりしていて、そうしてこの世に生きているわけだ。
そういう生きた私たちの口から出た息もまた不浄。
そんな不浄な息を吹いて清浄な線香の炎を消すような消し方は避けるべき。
だからマナー違反の筆頭となるのだ。
正しいマナーの「振り方」「扇ぎ方」
そこで、今度はマナーに沿った正しい消し方をお伝えしよう。
二つの方法を押さえておくと良い。
・香炉や線香立てに線香を置いているときには、手のひらで扇いで消す。
もう少し詳しく言うと、
「線香の炎を利き腕でない方の手の平で覆い、利き腕の手の平で扇ぐ」。
・手に持っているときには、振って消す。
これも下に詳しく説明すると、
「線香の束を縦に持ちながら、垂直に下へサッと振る」。
これで灰も飛ぶことなく、本当にすっと火が消える。
ちなみに、これらはお坊さんがやっているやり方で、その意味からも一番正しい消し方になる。
ここまで消し方のマナーを知らない人が圧倒的に多いはずだけれど、知っておけば心強い。
たまに法事に出かけるときでも、よく見かけるけれど火の消し方がわからなくて焦ってしまう女性も多い。
男性の方たちは結構アバウトで、何のためらいもなく口で拭いて消してしまう人の方が多いくらいな感じもする。
だからそれが標準だ、と思ってしまう女性も多いかもしれない。
でも、私はあまり言われなかったが、知人友人の女友達の中には親や祖母などから、
「息を吹いて消すのは死んだ人に失礼なこと」
みたいに教わっている人が多い。
それはそれで、昔の人が信じ込んでいる迷信みたいなものなのかな?
相違う風に私もつい思ってしまうことが多い。
だがどうして、仏教の世界も本当に奥が深いようだ。
本当に霊魂にとって線香はマスト?
これで大体、正しいマナーに沿った消し方、そしてその背後の意味をお伝えした。
ただ、あの世の人たちと関わり合いという点でマナーというものを見てきたわけだけれど、あくまでもこれは仏教の教えの通りの話だ。
でも、もしも本当にあの世の人たちの霊魂があるとたら、また別な考え方になるのではないだろうか?
私たちは特にテレビなどの心霊番組で、霊と線香の関わり合いを見たりする。
テレビがいつも全部正しい情報を流すわけはないし、かなり盛ったり創り上げたのがそういうバラエティ関係の番組だ。
鵜呑みにはできない。
でも、それでも確かに線香というのは慰めとか浄化、冥福を祈ったりお祓い祈祷というシーンにはそんな番組の中で毎度のように出てくる。
だから完全になんちゃってな都市伝説などでもないようだ。
実際、私の知っているその筋の人に聞いても、線香は除霊や浄霊には欠かせない。
だから消し方とか、細かなことまでは言えないかもしれないけれど、やっぱりマストになる、と考えた方が良い。
一番大切なのは心の向け方?
しかしながら最後になるけれど、実際そういう人に聞いても、線香をきっかけにして私たちに最も大切なことがあるということ。
そういう気づきを与えてくれているようだ。
それはやっぱり形だけではない、私たちの亡くなった人たちに向ける心のあり方。
どうしてもそういう「目に見えない人たち」に対しては、お寺や神社で教えられたとおりの作法やマナーを守っていれば良い、というだけで済ませてしまうことが多い。
そのため、ともすると形の上、見かけ上のことばかりに気を取られてしまいがちだ。
本来あるべきなのはもちろんそうではなく、心の向け方になる。
私たちとあの世の人たちとは心でのみ通じ合えるわけだから、しっかりと心から慰めやご冥福を祈る、という態度が一番大切になる。
線香の煙も匂いも、確かに霊の好きなものだから、焚いた方がもちろん良い、と私も聞いているけれど、その消し方などの知識も併せて、しっかりした「心のマナー」、どうか忘れないでいただきたい。
(喜屋武氷捺)