冬の時期のみ症状が現れるうつ病の一つとして、冬季うつというのがある。
友人の一人、アラサーの女性がどうやらかかっていたらしい。
特に女性に現れやすいといわれ、性格的ににも彼女はうつの人によく見られる几帳面で、マジメを絵に描いたような性格だ。
そして頑固なまでに自分の仕事を最後までやり通そうとするタイプだ。
その彼女がこの頃、私たちと会ってもブス―ッとして口を聞くでもなく、なんだか変にイライラしているのだ。
その彼女も昨年夏にようやく「春」が訪れ、アラサーでありながら交際中の男性が出来た。
その男性もイケメンで、私も彼女と一緒の時に会ったことがある。
けっこう面倒見が良いという彼女の評だそうで、インテリだしずいぶんうらやましいと思ったものだ。
冬期うつの最大の原因は日照不足
その時冬季うつだというのは彼女も自分でわかっている、と彼氏から聞いたことがある。
うつの人の接し方は周囲でよく気を遣ってあげなくてはならない、と彼氏もいろいろ調べて知っていて、彼なりに気を遣って接しているようだ。
その冬季うつの一番の原因といわれるのが、冬独特の日照時間の不足という。
日光は特にUVによって肌を痛めてしまうから女性はかなり気を遣ってしまうのだが、人間の体はそう簡単ではなく、やはりある程度は浴びる必要がある。
日光を浴びることにより、体内にセロトニンというホルモンが形成されるが、これが実は精神を安定させる役割があり、うつなどを防止しているのだ。
同時にカルシウム分を体が吸収するのを助けるビタミンDの生成も促すという。
また、日光の紫外線自体も適度に浴びることによって皮膚の免疫機能も上昇する。
だからとかく悪者と思われがちだが、日光を浴びて、紫外線を吸収することもある程度までは必要なのだ。
だが冬はどうしても外が寒くなって外出が億劫になるし、日照時間も短い。
日光の恩恵を受けなくなりがちで、そんなわけでどうしても冬季うつが発生しやすくなるのだ。
冬季うつの症状
冬季の症状はふつうのうつと共通しているものもあれば異なる場合もある。
彼女のように人付き合いを敬遠しがちで、笑顔が消え、ものすごく自己否定的になったりするのはふつうのうつと同じような症状だが、人によっては甘いものや炭水化物を求めて過食になったり、そして肥満になったりするという。
彼女の場合、太ったりはないようだし、以前にも確かに冬場にそう言う雰囲気になった時があったが、春になるとケロッとして朗らかそうにしていたのでそんな重い症状だとは思わなかった。
というか、私も冬季うつという、特別なうつ病があることを知ったのは最近だ。
周囲の人は病気を理解してあげること、日光に当たらせて偏食を無くすこと
ふつうのうつの人もそうだが、冬季うつの人の症状は一見ものぐさになったように見えたり太ったりするものだから、たんなるサボリとか、自堕落みたいに周囲から見られがちなのだ。
その彼氏もいろいろと情報を入手して接し方を習得したという。
「彼女が怠けているんじゃなくて病気だというのがわかっていますからね。無理をさせず彼女の気持ちがあまりシンドくなりすぎないようにしてます」
話によると、彼が話しかけても無視して返事すらしない時もあるという。
それでも気にしないで、ある程度は彼女を放っておくなどして陰から支えるようにしているという。
冬季うつの一番の治し方は、日照不足の解消となる。
それを知った彼は、冬の間、なるべく日光に当たるようにと、天気のよい週末など彼は自然に彼女が外出できるように買い物に連れ出したり、公園を散歩させたりしているようだ。
また、冬季うつの人は特に甘いものとか炭水化物を口にしたくなるという情報を聞いて、偏食を無くしてくれるようバナナなどのフルーツを買ってきてあげたりしているという。
「豆乳も良いそうなので、紙パック入りの豆乳を毎日彼女に飲むよう勧めてます」
うつ病患者を世話することで、うつになる人もある!
上の様な苦労話を私たち友人女性に話す彼には同情するしかないが、大変面倒見の良い彼らしいので、うらやましいくらいだ。
ただ、彼も自分なりに気を付けていて、
「うつの面倒を見すぎていると伝染するというから、ある程度は距離を置くようにしています。こちらが潰れたら元も子もないし」
と語っていた。
実際これは大げさなことでなく、うつ病の人を世話しているうちに、つとめて同情心や共感を持とうとしていることで、その周囲の人が同じうつを発症することがある。
そういうメンタルなバランスに注意しなくてはならないのが、うつの人を気遣う時の用心の一つだ。
彼自身も深く考えすぎないで、彼女と会わない日も適当につくって行楽に出かけたりするようだ。
以前母親が大病を患って、そのために病院でつきっきりになったりしていた経験があるというその彼は、冬季うつにかかった彼女を見過ごせないのだろう。
ふつうのドライな男性だったら彼女を一人にしたまま、別な女性をつくってしまったりもありうると思うが、私たちよりも年下の彼、すごい苦労人だ。
ただ、彼女の病気が毎年出てしまうのを何とかしたいのならば、可能かどうかわからないが寒い冬、日照時間の短い東京や関東でなく、旅行でも良いから沖縄などの温暖で明るい地方に出かけてみてはどうだろうか?
彼女も確かに頑張り屋過ぎる性格なのだ。
だからおおらかな南国の人に囲まれればそうした心のカベがほぐれ、性格という根本的な段階から良くなっていくかも知れない。
(増淵夕子)