ドラマ「不機嫌な果実」が最終回に向けて佳境に入ってきた。
稲垣吾郎さん演じる航一役が、見ていて何となくミステリアス。まるで「あの」ドラマシリーズの世界を彷彿とさせている。
それだけ彼の演技は光っているといえるのだ。
最終回では夫である航一を演じる稲垣吾郎さんと久美役で不倫相手となる高梨臨さんとの関係にブチ切れた麻也子(栗山千明)が、不倫相手の元に走ることとなり、一件ぐちゃぐちゃな人間関係が展開することになるという。
記憶喪失になったフリをしていたことが妻にバレた稲垣さんは、相変わらずあのポーカーフェイスで人を食うような、それでいて潔癖なイメージを維持するんだからスゴイ。
ちょっと最終回の内容も交えてしまうが、あれは彼しかできない役、遠くの視聴者が言うのもムリはないかもしれない。
マザコンで潔癖症、しかも寝取られる役は稲垣吾郎のはまり役
不機嫌な果実はご存じの方も多いと思うが、20年ほど前にもドラマ化されている。
男女関係についてこれほどにどろどろしたドラマも久しぶりだが、それ以上に稲垣吾郎さんがこうした役どころに抜擢されたのは何かの縁だろうか。
稲垣吾郎さんは私のイメージの中では、むしろホラーとか探偵ものの演技で印象深い。
だがそんなミステリアスなイメージがこういう不倫ドラマの中で、すごくキャラ立ちしている印象を与えてくれ、ある意味主役で妻の役である栗山千明さんを喰っているくらいの感があるかもしれない。
97年に放送された同名のドラマ「不機嫌な果実」は全11話で、季節も今作と異なり秋から冬にかけて放送だった。
私も子供の頃だったからあまり印象になかったが、当時としてはかなり斬新な内容だったかもしれない。
だがある意味連ドラの永遠のテーマである不倫が、20年までも今回の作品でも多くの視聴者に非常な衝撃を与えているのは確かだろう。
私もまさか稲垣吾郎さんが、ベッドシーンにもつれ込むとは思っても見なかった。
しかも栗山さん演じる妻・麻也子がその浮気を知った段になった時の稲垣さん。
SMAPがそろった時に見慣れているはずの彼の顔なのに、こういうときにもすごく切迫感があるから面白い。
おかしいな、不倫ドラマのはずなのに。
稲垣吾郎のイメージの原点は探偵とホラー?
実のところ、私の中の稲垣吾郎さんのイメージの原点は「ホントにあった怖い話」だ。
その次に探偵ドラマ「金田一耕助」。
これ無しでは私の中で稲垣吾郎というイメージは作れない。
あの中でホスト役で出てくる稲垣さんは、子供の頃見たけど、好きだったし、今でも彼の表情にはあのときの怪奇な彼のイメージが乗っかっている。
そんな先入観が元々あるためなのだろうか、彼のベッドシーンの演技もなぜか“安心”してみていられるのだ。
多くの彼のファンは気が気ではないかもしれないが。
そんな彼がマザコンの航一役になるのは、ある意味当然の帰結ではないだろうか。
そもそも彼自身、あまり女性とのロマンスが聞こえるようなエピソードはない。
一時菅野美穂さんとの噂も立ったようだが、あくまでも噂。
ある資産家男性との同居生活が話題になったこともあったが、いまだに稲垣さんについては、実際の男女関係についてはクリーンなイメージしか湧かない。
でも、だからこそこういうはまり役が時として彼の本領発揮のチャンスとして出てきたのだろう。
ちなみに、97年放送の同名ドラマ「不機嫌な果実」では、全11回にわたって視聴率が常に13%以上という、とてつもない記録をたたき出している。
それに対して、今回最終回を待って放送されている「不機嫌な果実」は毎回8%とか7%と、つましい視聴率だ。
この視聴率の低さについてどう考えていくのか、いろいろな考え方はあるけれども、少なくとも稲垣吾郎さんを始め、主役の栗山千明さん、市原隼人さんなどメインキャストは実力派揃いだ。
むしろコアなドラマファンに限定のコンセプトにキャスティングや制作し、またそういう視聴者に対して限定的に考えられたのが、今回の「不機嫌な果実」出はないだろうか。
そのキャスティングの中で気になったのが、市原さんと稲垣さんとの演技の方向性が真逆に見えるようにも感じる。
私はむしろ市原さんの方をマザコン役に、そして稲垣吾郎さんを主人公の麻也子と不倫に絡む工藤道彦役にすることもアリかな、などと思ったりしていた。
だがアノミステリアスなマザコン役はやっぱり稲垣さんの専売特許だと言えるに違いない。
ドラマ「不機嫌な果実」、そういうわけで最終回になだれ込みかけてきている。
稲垣吾郎さんは妻の麻也子(栗山)にどんなことを言うのか、離婚かそれとも元サヤ宣言か。
そんなわけで配役はすごく光っていたと思うし、演技も稲垣吾郎さんら、個性あるメインキャスターがそろってくれて上機嫌で見ることが出来た「不機嫌な果実」。
でもやっぱりこの辺ドラマだな、と良い意味で納得できるのは名取裕子さん演じる早苗さんが道彦さん(市原)の実の母、という関係かもしれない。
稲垣さん達とはまた世代の違う演技レベルで、ドラマをまとめてくれるに違いない。
(一ノ瀬絵美)